ゴハンの国の人
まるで夏の終わりの空みたいだった。湿った風はどこか淋しさを含んでいて。
夏休みに入ったせいか、朝早くからこどもたちの声が鳥のさえずりと一緒になって町にこだましてた。いいな、こういうのって、、、。どこか安心する。
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今日もやっぱり王子は仕事に出かけていった。疲れる疲れる、、、と言いながらも、自分の技術を十分に発揮できるその仕事にはやりがいがあるみたいで、今の王子はどこか輝いて見える。
だけどそういう輝いてる姿を見ると、正直なにも言えなくなってしまう。たとえば、早く帰ってきてほしいとか、次の休みはいつとか、、、いつもならぽんぽん出てくる言葉もこういうときは喉の奥でぐっとこらえてしまう。いくらこの私だって、そこまでKYではないのだ。
それだけ彼は真剣だということだ。
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そうなると私は私で、楽しい世界にずっぽりと浸かってしまおうと決めてる。そう、ゴハンの世界に。
精密機材の設計をしたりそういう特別な技術を持った人にしかできないような仕事をしている王子からしてみたら、私のやってることなんていうのはただのおままごとにすぎないかもしれないなと、ふと思ったりもした。
ごはんは誰でも作れるし、あまりにも身近なことだもの。
だけど私にはこれくらいしかできることはないし、なぜだかどうしてだかゴハンを作るということに意味を感じるし、、、。
自分がここまで生きてきて、経験したことや、感じたことを、全部表現できるのがゴハンなのだ。そしてもしそこに共感してくれる人がいたら、すごく嬉しい、、。
ただそれだけ。それしかできない。
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お昼には子供さんがお誕生日だというママたち3人が来てくれた。
5人の子供たちはみんな元気のかたまりだった。
自分の息子への想いがあるからこそ、やっぱり「こども」というだけで自分は特別な気持ちになるのだ。ひとりひとりが宝石みたいにキラキラしてて、可能性もいっぱい秘めていて、、、なんといってもこどもたちの心っていうのは透き通ってる。
子育てしてたときは一番近くで注ぐことができた愛情も、、、自分がこういう状況になるとそういういうわけにはいかなくなる。だけど離れれば離れるほど、愛情の色は濃くなるというのも、この状況になって感じたことで。
だから今は、こどもの気持ちと、お母さんの気持ち、両方感じることができる。
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夕方すぎてお店開けた。
今日は一度も王子からの電話がないことで、彼の仕事の状況をなんとなく察した。何時ころ帰ってくるのか聞きたくても電話できない、こういうときって。
そんなことぼんやり考えてたときに、今日初めての電話が。あと1時間くらいで帰れるとのこと。
なんか元気出てきた。
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